聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~

カーテンの隙間から差し込む日差しに、リュティアの浅い眠りは破られた。

瞼を開いて最初に見えたのは、天蓋でも天井でもなく、積み上がった書類の山。なぜだろう。それに頬に何か固く冷たいものがあたっている。二三度瞬きをし、リュティアはがばりと身を起こした。

まだ見慣れぬ執務室の様子が目に入った。深い茶色を基調とした調度品の数々。分厚い資料が並ぶ高い書棚。目の前に広がるのは重厚なつくりの机で、書きかけの書類とはんこが散らばっている。

リュティアは顔を歪め頭を抱えた。どうやら昨夜仕事の途中で机につっぷしてそのまま眠ってしまったらしい。

変な姿勢で寝たせいで体のあちこちが痛いわ、きのうのうちに済ませなければならなかった仕事が机の上に山と積まれているわで、リュティアはそっと溜息を洩らした。

しかし朝が来てしまったからには今日の仕事を始めなければならない。

リュティアはカーテンを開けようかと手を伸ばしかけ、やめた。

リュティアが何か自分で部屋の掃除をしたりすると、侍女が困るからやめてくれと、先日侍女頭にお小言を言われたばかりだったからだ。そう言われてしまうとリュティアには何もできなくなる。

リュティアは身を起こし、執務室を出た。

続き部屋は女王の私室になっている。

白大理石を基調とした家具が並び、小物まで淡い桜色で統一された広く美しい部屋だ。

ちょうど侍女が部屋を整えている最中だった。

「女王陛下、おはようございます」

「おはようございます」

言ってから、リュティアは思い出す。侍女に敬語を使うなと侍女頭から言い含められたことを。

ただおはようと言い直さなければならないだろうかとリュティアが唇を閉じたり開いたりしていると、侍女がぺこりと頭を下げた。
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