聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
「朝までお仕事、本当にお疲れ様でございます。本当に熱心にお仕事なさっていらっしゃって、わたくし感じ入っております」

そんなふうに尊敬のまなざしでみつめられると、途中から寝ていた自分が仕事熱心でないような気持ちになって、リュティアはあいまいな微笑みを返した。

「すぐに朝食をお持ちいたしますね」

今日もこうして一日は始まっていく。

私室で一人豪華な朝食をとり、侍女たちに囲まれての湯浴みを済ませ、身支度を整えられる。洗われすすがれ並べられる皿のような心持ちだ。あれよあれよというまにドレスを着せられ、手袋をはめられる。

「今日のドレスにはこの髪飾りが合いますわ」

侍女の一人が嬉しそうに髪飾りをつけようとするのを、リュティアは慌てて止めた。

「髪飾りは…いいです。ありがとう」

というのも、先日侍女の勧めをことわれずに花の髪飾りをつけて朝議に出たら、幾人かに白い目で見られ、ことさらにため息をつかれたのだ。

彼らが政務の場で着飾る女王に呆れたのは瞭然だった。

それはわかる。

侍女の好意をことわれなかった自分が悪いのだろう。

でもリュティアのやわらかい心はそういったことにいちいち傷ついてしまうから、もう傷つきたくなくて、リュティアは今日は髪を結わないで朝議に行くことにした。

彼らの言うとおり、政務の場におしゃれは必要ないのだから。

主宮殿の会議の間は、女王の私室の隣の棟にある。リュティアが開け放たれた扉をくぐると、すでに王国の重鎮たちが顔をそろえていた。
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