聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
「本当に申し訳ありません…」

謁見の間の玉座にて、リュティアは身を縮めて大司教ポルカと向かい合う。

「あやまっていただいて済む問題ではございません! なぜあれほどの宝剣に専属の警備をつけなかったのですか! あなた様のせいで、神殿の正当性まで疑われているのですよ!」

そう息巻くポルカはまるで鬼の形相だ。今までやれ神だ奇跡の力だとリュティアを担ぎあげていた彼の、掌を返したような態度に、リュティアは衝撃を受けて萎縮する。

―確かに警備はつけなかった。でも旅の間はこの宝剣よりも、実用性のある弓の方がずっと大事にされていたくらいなのだ。どうして今さら剣に専属の警備をつけようなどと思いつくだろう。

「どのように責任をとられるおつもりです! 退位でもされますか!」

激しい言葉の刃がリュティアの胸に突き刺さる。

「それは………」

「だいたいにおきまして―――」

今にも泣き出しそうなリュティアに、ポルカがさらに辛辣な言葉を重ねようとした時だ。

「少し黙られよ! ポルカ殿」

号令のような一喝が謁見の間を震わせた。

その声の余韻を追うように、奥の間から長身の人影が二人連れ立って歩いてきた。

グラヴァウンとフリードだった。

二人はリュティアとポルカの間に割って入ると、じろりとポルカを睨みおろした。

「女王陛下は常に我々のために体を張って執務にあたっておいでだ。責められるべきは賊であって、陛下ではない。それをお忘れめされるな」

そう言ったのは、グラヴァウンの声だった。

「そうだ。陛下は神殿のお飾りの聖乙女ではない。我々の女王であらせられるのだ」

続いて、フリードの声…。

―え…?
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