聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
『私は運が良かった…いや、魔月に食べられたあの状況は運が悪かったから、不幸中の幸いだったと言えばいいのかな。
とにかくがむしゃらに腹の中で暴れたおかげで、魔月が吐き出してくれたんだ。
しかしその時すでに私の下半身は再起不能なまでに粉砕骨折していたから、吐き出されたはいいものの私は身動きできなかった。
あの時別の魔月にみつかっていたら、私の命運は尽きていただろう。
私は運が良かった。ほかの魔月にみつからなかったんだ。それで、通りがかったアタナディールの商人一家に救われ九死に一生を得た。
それからはずっとその商人の家に世話になっていたんだ。リュー、君の無事がずっと気がかりだった。女王と新生フローテュリアの噂にどれだけ喜んだか』

謁見の間で再会した時ラミアードの足の骨はほとんどが粉々で、普通なら二度と歩くことはできない重症だった。
リュティアはこの時はじめて自分の力を心から神に感謝した。リュティアの癒しの力で、彼の足は瞬く間に完治したのだから。

こうして今元気に馬に乗り、その微笑みを見せてくれることが、どんなにリュティアにとって幸せなことか。

リュティアは感極まってラミアードにとびつき、彼の胸の中でくぐもった声を出した。

「さあ、行きましょうお兄様! お茶の準備はできていますから」
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