聖乙女(リル・ファーレ)の叙情詩~真実の詩~
第五章 冬蛍が語る秘密

ピィィ―――!

一羽の鷹が啼きながらまるい蒼穹を旋回する。鋭い指笛の音を合図に鷹はその体を一直線に降下させ、ばさりと翼を広げて優雅に舞いおりる。

大勢の騎乗した兵たちの先頭にて、目の覚めるような白馬を操る一人の若者の腕へと。

彼の髪は風に揺れるとさらりと流れ、陽の光を透かせば燦然と蒼く輝く。その背には彼の髪の蒼さそのままの蒼いマントが颯爽と翻る。彼が兵たちを従え、鷹を供に凛然と馬を進める様は、まるで物語の中の英雄のように見えた。

リュティアは鷹狩りから帰ってきた彼―ラミアードを、城門前で惚れ惚れと眺めていた。

微笑みながら鷹の頭をねぎらうように撫でるその様を目にすれば、リュティアは昔彼が花園宮に愛鷹を連れてきてくれたあの日を思い出す。

そのマントが風になびくのを目にすれば、昔リュティアが縫ったへたなマントをそれは大事に着てくれたことを思い出す。

その微笑みを目にすれば―――…これ以上は語らずともよいだろう。

つまるところラミアードの何もかもが、リュティアに懐かしさを呼び起こすのである。

「おや、私の姫君、君はわざわざこんなところまで私を迎えに来てくれたのかな?」

馬を下りながら、ラミアードが嬉しそうに目元を弛める。リュティアはそれが嬉しくて声を弾ませる。

「はい! だって今日はこれから、お兄様とお茶する約束ですもの! 待ちきれなくて」

その時間をつくるためにリュティアは今日、早朝からはりきり並々ならぬ努力で執務を終わらせたのだ。

「かわいいリュー」

そう言って、ラミアードはリュティアの額に口づけた。

あまりにも懐かしいその感触に、リュティアはまた涙ぐみそうになった。

彼が生きていてくれたこと、こうしてそばにいてくれることは、リュティアにとって奇跡だった。いや、実際、奇跡だったのだ。ラミアードが助かった経緯は、奇跡としか言いようのないものだった。
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