純愛は似合わない
「自分の投資先が上手くいっているのか知りたいんじゃない?」

でなきゃ、右往左往する私に対する意地悪か。

「それで早紀達は…」

光太郎はグラスを片手に言い澱む。

「聞き難いんだったら聞かないでよ、光太郎ちゃん」

「ごめん、聞く権利無いものな。でも、早紀に会うって電話したら千加も気にしてたんだ」

「千加ちゃん、天然の割に心配性」

千加ちゃんは、私の3歳上の姉だ。

彼女は昔から、良くいえば「おっとり」という言葉が良く似合った。
いつもマイペースな朗らかさと、ちょっとした脆さを持っていて、周囲の人々の『庇護欲』を煽るような存在だった。

そんな彼女に比べると私は、負けん気の強い子供だったと思う。「早紀ちゃんはしっかりしてるから」という大人達の言葉を真に受けて、いつの間にか期待されるような生き方をしていた。


「でも、大分しっかりしてきたよ。ずっと早紀が、姉さんなのか妹なのか分らなかったけど、流石に2人目も産まれると、ぽやんとばかりしてられないっていうか」

「それでもやっぱりボケてるんだけどね」と言った光太郎の笑顔は本当に幸せそうで。
それを見ただけで、人を羨む心を忘れてなかったと思い知る。

早速役に立つじゃない、と思いながら、判で押した様な愛想笑いを浮かべて、光太郎と向き合った。
< 17 / 120 >

この作品をシェア

pagetop