純愛は似合わない
やはりヒロはモテる男で、話しが横道にそれても何度も話題の中に戻ってくる。

ナントカちゃんはヒロを誘ったけど撃沈したとか、他の子は飲みに行くのに成功したとか。
そして、噂では決して自宅へはお持ち帰りしないらしい。

……へぇ、それじゃ見た目通りじゃない。
ヒロの噂話しに、私の好奇心は少々刺激される。


「ねぇ、ヒロさん誘ってみようよ。今日ラストまでネバってみる?」

「アピってみるのも悪くないよね。少なくても、あの女よりうちらの方が若いしー」


私の悪口を楽しそうに語らう2人に特に言いたいこともないけれど、私のゲスな好奇心のせいで、完全に出るタイミングを逃してしまった。かと言って、大人げないことをする気も無いし。


「ちょっと位キレイめだからって、ムカつくよね。ってそのリップ、イケてる超かわいー」

「かなりプルプルっしょー、これでヒロさん落とせないかなー」


ようやく席に戻る気になったらしく、彼女達の出ていくドアの音がした。

そろそろと扉を開けると、まだ彼女達の甘ったるい香水の臭いが漂っていた。

柄にも無くその場所に留まってしまったと、手を洗いながら目の前に映る鏡の中の自分に向かって、苦笑を浮かべてみる。

……それにしても。自分を綺麗にするのも良いけど、マナー知らず。

髪の毛が落ち、ペーパータオルがグシャリと無造作に捨てられたままの薄汚れた洗面台に、溜息が溢れる。

私は殆ど無意識のうちに、新しいペーパータオルを使って掃除をし始めた。



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