純愛は似合わない
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長い一日だった。


ソリューションの懇親会は成功と言って良いだろう。


新社長として社員の間を縫う様に歩いていた速人の姿を閉じた瞼の裏に映し出す。

それにはどうしても、寄り添うように張り付いていた敷島紫までもが付随してくるのだが。


湯船に浸かりながら。
リラックス、と呟いて頭を天井に向かせた。

途端に私の黒い髪が揺らめいて泳いだ。



結局、瀬戸課長からはあれ以上、話しを聞き出せなかった。

ヒロに邪魔されたと言っても良い。

店にいる間中、彼の煩いほどの甲斐甲斐しさは止まることなく、終いには瀬戸課長の苦笑までも引き出した。

ヒロには自分の魅力を出し入れするポケットが備わっているらしい。

初めは訝しんでいた課長すら、彼の話術に嵌まった。



それにしても瀬戸課長は、速人は敵が多いと語っていたが、それは何を指すのか。

今更、失脚させる? 

……どうやって?

絶対的な力を持つ本家の御曹司を潰そうと画策する人なんているのか。

確かに代わりを引き受けたい人間はごまんといるだろうが。

速人と同等の力を手に入れたい人間。



「……良い眺めだな」


突然、思考を遮る低い声がして、ビクッと身体が震えた。

バスルームの扉から少しだけ冷えた空気が入ってくる。


……速人?!

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