豹変彼氏～ドラマティックに愛されて～

稽古場が見えてくると、ちょうど一台の黒のバンが到着するところだった。


スライドドアが開いて、中から志賀が出てくる。続いて孝志が降り、後ろからゆうみが見えた。ゆうみはごく自然に孝志の腕に手を添えている。孝志は振り向いて、ゆうみが降りるのを待った。


車を降りると、ゆうみは孝志から手を離す。志賀がスライドドアを締め、車は去って行った。


「おはうようございます」
志賀が気づいて、こちらに挨拶をした。


「おはようございます」
輝と光恵も頭を下げた。


「ミツさん、笑って」
耳元で輝が言った。


「大丈夫、中山ゆうみなんか、目じゃないから」
輝がいたずらっ子のような顔をしてささやいた。


「輝くん、心にもないことを」
「えへへ」
輝が笑う。


「本当。お人形さんよりも、ミツさんの方がいい女だって」
「お調子者なんだね、実は」
「そうですよ」
「だんだん本性が見えて来たな」
「ミツさんもね。昨日、すごかったから」
輝はそういうと、はじけるように笑い出した。


「ねえちょっと！　わたし何した？」
思わずミツは大きな声をあげた。


「忘れてるなら、俺だけの秘密で」
「ちょっと！」
駆け出す輝を追いかけて、ミツは稽古場に駆け込んだ。