豹変彼氏~ドラマティックに愛されて~
「夜分にすみません。さっきメールを入れたんですけど、お返事がなかったから直接伺ってしまいました」
輝は律儀にそう言うと、頭をさげた。
「あ、そうだった? ごめん全然気づかなくって。何?」
光恵が言うと、輝は布鞄から一冊の雑誌を取り出した。
「三池さんが、ミツさんに持っていってやれって。俺、家がここの近くなんで」
雑誌を手に取ると、演劇マガジンだった。付箋がついてるところを開くと、三池が劇団について話した記事だ。
「脚本の重要性について話したそうです。俺も読みましたが、ミツさんのことすっごくほめてますよ。記者さんもストーリーの良さを理解してる」
「わあ、ありがとう」
光恵はうれしくなった。自分の仕事を認められたときの歓びは格別だ。
すると頭のすぐ後ろから「もしかして、新人?」と声が聞こえた。
振り返ると孝志が、興味しんしんという顔で立っていた。
「そう、野島輝くん」
光恵はそう紹介した。
「よろしく」
孝志が言う。
「あれ!?」
輝は驚いたような声を出して、孝志を凝視した。