13年目のやさしい願い
「はじめまして。香村瑞希(こうむらみずき)です」
絵本を一冊読み終わると、お姉さん……瑞希ちゃんは、わたしに話しかけてくれた。
腰をかがめて、小さなわたしと目線を合わせてくれた。
「はじめまして。牧村陽菜です」
ぺこりと頭を下げると、
「おりこうなのね」
と驚いたように、目を丸くした瑞希ちゃん。
サラサラの長い髪が、首を傾げると肩からこぼれ落ちた。
「陽菜ちゃんは、何歳?」
「6歳。……1年生です」
「そっか。わたしは13歳。中学2年生」
それから、瑞希ちゃんは、わたしを部屋に連れて来てくれたお兄さんを見た。
「あっちのお兄さんはね、浅木裕也くん。高校生なんだよ」
瑞希ちゃんが、わたしとしゃべっている間、裕也くんは楽しそうに、次の絵本が待ちきれない子どもたちの相手をしていた。