13年目のやさしい願い


わたしと話すために、わざわざカナのいない時間を選んで、ここ……保健室にやって来た田尻さん。

その姿を見た時、背筋が凍った。

わたしを呼び出す冷たい笑顔が脳裏に浮かぶ。

笑顔なのに、笑っていない目。



呼び出された校舎裏。

空は青く澄み、輝くような緑に縁取られていた。



自分が、今、どこにいるのかを忘れそうになる。



違う。

あれは、過去のこと。

あれは、一年も前のこと。



大丈夫。

大丈夫。

大丈夫。



「ごめんね」



硬い表情で、謝りに来た田尻さんを思い浮かべる。



「……心配してるの、これでも、一応」



そう言った田尻さんの、ぶっきらぼうな横顔を思い浮かべる。



ようやく、意識が目の前の彼女にまで戻ってきた。



だけど、ホッとして握りしめた拳をゆるめた瞬間、

わたしの動揺をじっくり観察していたらしい彼女は、意地の悪い笑みを浮かべて、さっきよりもゆっくりと、一語一語区切るように、同じ言葉を繰り返した。



「叶太くん、かわいそう」


< 238 / 423 >

この作品をシェア

pagetop