13年目のやさしい願い
わたしと話すために、わざわざカナのいない時間を選んで、ここ……保健室にやって来た田尻さん。
その姿を見た時、背筋が凍った。
わたしを呼び出す冷たい笑顔が脳裏に浮かぶ。
笑顔なのに、笑っていない目。
呼び出された校舎裏。
空は青く澄み、輝くような緑に縁取られていた。
自分が、今、どこにいるのかを忘れそうになる。
違う。
あれは、過去のこと。
あれは、一年も前のこと。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
「ごめんね」
硬い表情で、謝りに来た田尻さんを思い浮かべる。
「……心配してるの、これでも、一応」
そう言った田尻さんの、ぶっきらぼうな横顔を思い浮かべる。
ようやく、意識が目の前の彼女にまで戻ってきた。
だけど、ホッとして握りしめた拳をゆるめた瞬間、
わたしの動揺をじっくり観察していたらしい彼女は、意地の悪い笑みを浮かべて、さっきよりもゆっくりと、一語一語区切るように、同じ言葉を繰り返した。
「叶太くん、かわいそう」