13年目のやさしい願い
数年前、まだ中学生だった頃。
国家試験に受かった裕也くんは、研修に入る前にと、家まで会いに来てくれた。
そして、ひとしきりおしゃべりをした後、聴診をさせて欲しいと頼まれた。
裕也くんは、真顔でゆっくりと、とても丁寧に聴診器を動かした。
聴診器がわたしの身体から離れたところで、
「雑音、聞こえた?」
そう聞くと、裕也くんは、
「……多分」
と自信なさげに答えた。
瑞希ちゃんのために医者を目指した裕也くん。
瑞希ちゃんがいなくなってから、医者になった裕也くん。
本当は、瑞希ちゃんにこうしたかったんだろうな、と思った。
「次に会う時には、ちゃんと診察できるようになってるから、待ってて」
裕也くんは、真面目な顔でそう言った。