13年目のやさしい願い


「何でもいいけど、とにかく、自分の感情に素直にね。

我慢しないで、何でも、取りあえず言ってみなさい」



突然の話に、かえってママの真意が気になる。

だけど、何でそんな話をしたのって聞く前に、ママは腕時計を見て、慌てて言った。



「行かなきゃ!」



お医者さんのママは、とにかく多忙。

もちろん、お昼休みは一時間なんて取れない。

これを、もちろんと言って良いのか分からないけど、未だかつて、そんなにゆっくり休んでいたママを見たことはない。



ママは残った栄養ドリンクをぐいっと飲み干すと、



「じゃあねっ!」



と、空っぽのお弁当箱の入った袋を手に取り、軽く手を上げ、足早に病室を後にした。

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