13年目のやさしい願い
ハルをベッドに寝かせて、リビングに戻ると、明兄がソファで新聞を読んでいた。
日曜日の昼下がり。
午前中にあんな物騒な会合があったとは思えない、静かな時間が流れる。
明兄はハルが目覚めたら、夕飯を一緒に食べてから下宿先に戻るという。
下宿先と言っても、おじさんが上京する時に利用するために買った、立派なマンションだという話。
一日置きにヘルパーさんが入るから、食事や掃除に惑わされることなく、勉学に勤しめるらしい。さすがリッチだ。
それはさておき、
ハルは夕飯も明兄が一緒と聞いて、やはりとろけるような笑顔を見せていた。
オレは夕飯前に家に戻る予定。
夕方にはおじさんもおばさんも帰宅するから、牧村家は久しぶりに家族四人で晩餐だろう。
オレは勝手知ったる何とやらでキッチンに行き、沙代さんからお茶を受け取ると、明兄の向かいに座った。
それから、気になっていたことを聞いてみた。
「ねえ、明兄、興信所使ったんだよね?」
「ん? ああ。自分で調べる時間もないしな」
「おじさんに頼んで?」
「いや」
「じゃあ、うちの親父?」
親父なら、喜んで子飼いの探偵を差し出しそうだ。
「いや。
協力は申し入れてくれたけど、まずは自分で動くからって断った」
「え、じゃあ、じいちゃん?」
そりゃ、じいちゃんならハルのために何でもやってくれそうだけど……。
「バカ。なんで、こんなくらいでじいさんを使うんだ」
「だよね〜」