極彩色のクオーレ





ニコは着地した牡鹿を振り向かせた。


子どもは無傷で、足を止めて大破した馬車をぼんやりと見つめていた。


セドナが身を乗り出して叫ぶ。



「おい!お前ら大丈夫か!?」



土埃の中からは返事がない。


ニコが牡鹿を近づけようとしたとき、一人の若い女性がこちらに走りよってきた。



「ダイヤ、ダイヤ!」



どうやら子どもの母親のようである。


途端、呆然としていた子供が火がついたように泣き出した。



「ああ、良かった、無事で……」



母親は我が子をかたく抱きしめ、それからニコたちを見上げた。


それはよくティファニーに刺繍をんだり教わりに来たりする婦人だった。


何度か会ったことがあるのでセドナも顔を覚えている。


ニコとも親しく関わっていたはずだ。


柔らかく母性溢れる笑みを常に浮かべている印象の強い女性だったが、今は怯えきった表情を彼らに、ティファニーに見せていた。


それが彼女の娘を轢き殺しかけたのが原因ではないことくらい、鈍いニコでも察することができた。




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