極彩色のクオーレ
つまり、前方から邪魔をしてくる者はいない。
少し安心したセドナはニコに叫んだ。
「ニコ、このまま石垣に沿って走れ!
確かもうすぐ大臣たちの演説会があったと思うから、演説台が設置されてるはずだ。
そこが一番、上にも下にも声が届く」
「分かりました」
ニコは手綱で牡鹿の首を強く叩き、さらに加速させる。
だが即席で造ったうえに限界ぎりぎりの速度で走らせ続けているため、あちこちの関節部分から悲鳴があがっていた。
もうこれ以上の走行は不可能に近い。
「セド……」
――ヒュンッ
ニコが話しかけたそのとき、後方から何かが投げられた。
弧を描いて牡鹿の進行方向上に落ちてくるそれを見て、セドナがサッと青ざめる。
それは大型獣を仕留めるためによく用いられる、殺傷能力の極めて高い手榴弾だった。
「ニコ!鹿から降りろ!」
「え?」
ニコがセドナに尋ね返したのと、セドナがティファニーを抱えて牡鹿の背中を蹴ったのと、手榴弾が着地したのはほぼ同時だった。
のどかな雰囲気の道に閃光と耳をつんざく轟音が迸る。
「うわっ!」
「きゃあっ!」
爆風に吹き飛ばされたセドナはティファニーを強く抱きしめて背中を丸めた。
そこを地面に強打し、その勢いのままごろごろ道を転がる。
石垣にぶつかったところで止まることができ、止まったことによってどっと全身にのしかかってくる痛みに呻いた。