極彩色のクオーレ
「そうかい、寂しくなっちゃうわねえ。
あんたがいてくれると助かるって、街の人らもけっこう言っているよ。
はい、お待ち遠様」
少年の前に朝食を置いて、女将が頬杖をついた。
温かいスープと、焼きたてのパン2つ。
少年は手を合わせ、香ばしい匂いを放つパンにかぶりついた。
「アタシもね、あんたが居てくれて助かったって思ってるよ。
壊れちまった物をあんなにきれいに直してくれる修理屋なんて、他にいないからさ」
「この3週間、山ほど直しました。
滞在期間が長いのもあるけど、こんなに依頼されたのは初めてでしたね」
思い出してみる。
時計やドアベルといった小物、椅子やベッドといった日用品。
さらには工房や仕事場で使われる工具、重機の修理まで依頼された。
指を折って話す少年を、女将が苦笑で遮る。
「悪かったねえ、あんたの評判を聞きつけた連中が多くって。
アタシも依頼の波を止めるのに苦労したよ。
でも、しこたま直して、やりがいはなかったかい?
あんたの生業だろう?」