極彩色のクオーレ
「う〜ん……」
口元についたパンくずをナプキンで拭い、少年は唸った。
コーヒーをすすり、渇いた口の中を湿らす。
「難しいところですね」
「おや、それはまたどうして?」
「ぼくが一番嫌いなのは、壊れることです。
それを直すことができるようになって、修理屋になったんですけど……。
直すためには、壊れなくちゃならないでしょ。
それが少し嫌なんです、まぁ仕方のないことですが」
女将が驚いた表情になって、コーヒーを注ぐ手を止めた。
まじまじと少年を見つめる。
「……言われてみれば、確かにそうだねえ。
そういう考え方、あんまりしたことがなかったわ」
「それと……」
「まだ他にもあるのかい?」
スープのジャガイモが思ったよりも大きくて、少年は頷くだけしか出来なかった。
どうにか飲み込み、またコーヒーで口を直して答える。