極彩色のクオーレ
「ぼくが居ると、壊れ物が増えそうで……」
「え?」
空になった皿にパンを一つ載せながら、女将が首をかしげた。
「増えることないでしょう。
あんたが直してくれるんだからさ」
「えっと、そういう意味じゃなくて。
街の皆さんが、物を大切にしてくれないんじゃないかと思ったんです」
言いにくそうに、少年は小声になる。
3週間弱、修理屋として動いていた時に感じたことだった。
依頼の数が日に日に増え、中には『ついさっき壊したから直してくれ』という人もいた。
それも一人や二人ではない。
後半の依頼の過半数が、主にそれだった。
「直してくれる人が近くにいる、これは別に悪いことではありません。
ただ、そうなることで、『いつ壊しても直してもらえる』と思ってしまうんでしょうね。
壊れてもどうせすぐ修理屋に持っていけば大丈夫、だと。
だから、街の人たちの物の扱いが雑になってしまったら、嫌なんです」