極彩色のクオーレ
長期宿泊の料金の代わりに、毎日修理物をお願いしたい。
それが2週間前、セドナの手伝いのために泊まることを伝えたとき、女将に持ちかけられた取引だった。
少年は快諾し、毎日5、6個の破損物を引き受けた。
納屋に放り込んでいただけの物が使えるようになったことと、修理の質の高さに女将は少年にあれこれサービスをしようとしたが、彼は『約束ですから』と丁に断っていた。
女将にとっては、宿泊代以上のことであったらしい。
少年は困ったが「切ってしまったから責任を取ってくれ」と言われると弱い。
ありがたく頂くことにして、フォークを手にした。
少年の隣に座って、女将が嬉しそうに笑う。
「あんたのそういう謙虚なところも好きだよ」
「はい?」
「大概の職人は、サービスしてもらうことを『当たり前』だと思っているのさ。
もちろん、違う人間だっているけどね。
職人でも収入とかに問題抱えている人が多いことは分かるけど……それを目当てにされてても、依頼客としては嫌なのよ。
でもあんたはちゃんと節操持っているわね、偉いわよ」