極彩色のクオーレ
落ちてきたそれは、真下にいた少年の頭に当たった。
重い音を響かせながら、洗面だらいが細かく振動する。
「あうっ」
「だ、大丈夫?」
脳天を押さえて少年がうずくまる。
ティファニーは空中をさぐって少年の背中を見つけ、さすってやった。
ニコは2種類の仕掛けを交互に見た。
「簡単なものとはいえ、完成度の高い罠ですね。
でも、どうして街の中にこんな罠が……」
「あーはははははは!」
突然、路地に高笑いが響いた。
まだ幼さの残る声である。
そちらに顔を向けると、少し離れたところに一人の少年が立っていた。
こちらの顔立ちもケセラと同様に中性的で、動物の毛皮を使った帽子をかぶっている。
色あせた革ベストのポケットに手を入れ、にやにやとケセラを見下した。
「やーい、やーい、引っかかってやーんの。
ほんっと、こんなに分かりやすく作ってあるのに、どうして引っかかるのかなあ」
「うう……ひどいよ、ギベオン」
少年が頭を押さえながら、ギベオンと呼んだ少年を恨めしげに見つめる。
対するギベオンは口笛を吹いて、両腕を頭の後ろに組んだ。
「ボクの罠に引っかかるオマエが悪いんだよ~。
悔しかったら上手くよけてみろ。
どんくさすぎて、笑える通り越して呆れるわ」