極彩色のクオーレ
ニコは少年の前に立つと、小刀を取り出した。
きれいに研がれ鋭利な光を放つ刃を見て、少年が青ざめる。
「ひっ!」
ニコは少年の背中を支えながら、彼を捕まえている縄を切り、地面に降ろしてやった。
少年はその場にへたりこむ。
頭を振り、涙にぬれた顔を袖で拭う。
「あ、ありがとうございます……」
「足は大丈夫ですか?」
「う、うん」
ニコに小刀を借りて、少年は足首にくいこむ縄を切った。
足首には、くっきりと紫色の跡がついている。
「本当にありがとう。
誰も通りかかってくれなくて、どうしようかと思っていたの」
少年がニコとティファニーに頭を下げ、ゆっくり立ち上がる。
だが、長い時間宙吊り状態だったせいだろう、危なげにふらつき、別の街路樹のほうへよろめいた。
そこにも根元から高いところにある枝にかけて、幹と同じ色の縄が通してある。
「あ、ちょっと……」
ニコが言う前に、少年が街路樹に、ごち、とおでこをぶつける。
途端、縄が根元から外れ、がさがさと枝が揺れる。
その中から小ぶりの洗面だらいが降ってきた。