10円玉、消えた
竜太郎が家に帰って来ると、幸子はかなりホッとした表情を浮かべた。
本当に友達にノートを返しに行ってただけなんだな、と思い安心したのだ。
部屋に戻り、竜太郎は自分のしたことをふと振り返ってみた。
なぜ自分は、こんなに店を継ぐことにしゃかりきになってるんだろう、と首を傾げる。
しかもハッキリと店を継ぐと決めたわけではなく、まだ心の中には漫画家になりたいという気持ちが半分あるのに、だ。
おそらくそれは、ラーメン屋か会社員のどちらかで成功するという、あの“10円玉占い”のことが頭の隅にこびりついてたからであろう。
そしてそれを、第三者の手で阻まれるのが我慢ならなかったのだ。
ただ、竜太郎自身にその自覚は全くなかった。
その日以降、幸子の口から店の譲渡に関する話しは一切出ない。
そうしているうちに、いつの間にか季節は夏を過ぎ秋へと入っていった。
竜太郎は、ある少年漫画誌の新人コンテストにダメもとで応募してみた。
応募作品は『怪人メンラー』というハチャメチャなアクション・ギャグ漫画。
最終審査まで残ったものの、結果は惜しくも落選。
だが入選ギリギリまで行ったことで、竜太郎は益々意欲を湧かせた。
本当に友達にノートを返しに行ってただけなんだな、と思い安心したのだ。
部屋に戻り、竜太郎は自分のしたことをふと振り返ってみた。
なぜ自分は、こんなに店を継ぐことにしゃかりきになってるんだろう、と首を傾げる。
しかもハッキリと店を継ぐと決めたわけではなく、まだ心の中には漫画家になりたいという気持ちが半分あるのに、だ。
おそらくそれは、ラーメン屋か会社員のどちらかで成功するという、あの“10円玉占い”のことが頭の隅にこびりついてたからであろう。
そしてそれを、第三者の手で阻まれるのが我慢ならなかったのだ。
ただ、竜太郎自身にその自覚は全くなかった。
その日以降、幸子の口から店の譲渡に関する話しは一切出ない。
そうしているうちに、いつの間にか季節は夏を過ぎ秋へと入っていった。
竜太郎は、ある少年漫画誌の新人コンテストにダメもとで応募してみた。
応募作品は『怪人メンラー』というハチャメチャなアクション・ギャグ漫画。
最終審査まで残ったものの、結果は惜しくも落選。
だが入選ギリギリまで行ったことで、竜太郎は益々意欲を湧かせた。