10円玉、消えた
黒部には唯一隠していた三間坂老人と10円玉占いのこと。
竜太郎は、いまそれを初めて打ち明けようと決めた。

常識的に考えて、とても信じられる話ではない。
夢の話か冗談話に思われるだけである。
だが黒部は真剣な面持ちで、竜太郎の話しをジッと黙って聞いている。
そして話しが終わると、途端に表情をフッと緩めた。

しゃべりっ放しで喉がカラカラになった竜太郎は、出されたコーヒーを一口飲んで言った。
「な、タカさん、バカげた話だろ。でも全部ホントのことなんだ」

黒部はニヤッと笑い、言葉を返す。
「信じるよ、その話。実は俺も、その三間坂って爺さんに会ったことがあるんだ」

竜太郎の目が大きく開く。
「えっ!い、いつ会ったんだ?」

「17の時だったかな。場所はリュウちゃんと同じあの公園さ」



驚いた。
まさかタカさんまであの爺さんに会ったことがあるとは。
爺さんはどこにでも、手当たり次第現れるんだろうか?
それとも何か、爺さんなりの基準があるんだろうか?
ただ言えるのは、爺さんは決して幻覚などではなく、しっかりと存在するものだってことだ。
父さんの推測した“超能力者説”が案外当たっているのかもしれない。


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