10円玉、消えた
土曜日、竜太郎は外出もせず、相変わらず朝からせっせと片付けをしている。

先ほど実家から連絡があった。
源太郎が店側とキッチリ話しを着け、明日から家に戻って来る、と幸子が言っていた。
当初はもっと早くに戻る予定だったが、やはり強く引き止められていたらしい。



10年以上暮らした住まいの片付けは、そう簡単には終わらない。
午前10時半頃、竜太郎はさすがに一旦小休止を取る。

そのときチャイムが鳴った。
ビクッとする竜太郎。

まさか里美じゃあるまいな…

竜太郎は若干身構えてインターホンに出る。

「はい、どちらさま?」

「わしじゃよ、竜太郎君」

三間坂老人であった。

急いで玄関ドアを開けると、31年前と全く変わらない姿がそこにあった。

「顔を合わせるのは久しぶりじゃのう」
昔TVで観た水戸黄門のような笑顔を見せ、老人はそう言った。

「ホントにお久しぶりです。さあどうぞ」
竜太郎は老人を中のリビングへ招き入れた。

「よいしょっと」
と老人はソファに腰を下ろす。

「何か飲み物は?」
竜太郎が聞く。

「いや、何もいらんよ。ところで、片付けが順調に進んでおるようじゃのう」


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