10円玉、消えた
夢のせいで、一旦忘れかかっていたことがまたぶり返してきた。
あの“占い”の際に消えた10円玉の行方。
竜太郎はそれが無性に気になった。

いつもよりかなり早めに家を出た竜太郎は、早速例の公園に立ち寄る。

もし昨日の10円玉が見つかったら、竜太郎はもう一度占いをやってみようと決めていた。
あの老人は“一人に一度きり”の占いだと言ったが、10円玉を落とし未完のままに終わった自分にはまだ権利があるだろう、と勝手に考えていたためだ。

ラーメン屋か会社員か、どちらが出ても嬉しくないものではある。
だがやはり竜太郎は、その結果を知らずにはいられなかった。

草むらの中を血眼になって探す竜太郎。
しかしすでに、10円玉は影も形もなかった。
おそらく誰かに拾われてしまったのかもしれない。

それでもまだ諦め切れない竜太郎は、公園の隅々まで必死に探し回った。
だが、やはり見つからない。

「お~い竜太郎、何やってんだ?」

呼び掛けたのは、同じ町内の同級生・吉井友和である。
友和とはかなり親しいというわけではないが、一緒に通学したり、時々遊んだりもする仲だ。

「ちょっと金落としちゃってな。探してんだ」


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