甘い唇は何を囁くか
漂う甘いきつい香り。

果実のようで、ワインのようで、薔薇の香りにも似た・・・。

えもいわれぬ、香り。

ちゅっ、と音を立てて牙を抜くと、遼子は甘く呻いた。

震えている。

この俺が。

この俺が、ともう一度考えてその震える指先を見つめた。

瞬時にあふれ出す殺意。

がくがくと、この身をほと奔る激しく、抑えの利かない―。

視線を感じ、バッと顔を上げる。

そこには、紅い目があった。

遼子を組み敷いたまま、その身を揺さぶりながら、口元に零れる紅い筋をべろりと舐めとって嘲笑を浮かべる―宗眞の姿が。


殺してやる


絶対に殺してやる


俺の遼子を―、そんな浅ましく貪るお前を、絶対に許しはしない。


泣きながら、俺を呼ぶ遼子が、そこにいる。

シスカは逃れるように、視線を逸らして身を翻した。
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