甘い唇は何を囁くか
この目を見ると、今でも胸がズキンと痛む。

あのことだけは、思い出さなくても良かったのにな・・。

「あいつのこと思い出してるんだろう?」

「・・え・・・。」

シスカは小さく微笑んだ。

「お前の瞳の色は、あれとは全く違う。薔薇のように深紅で、カシス色のように美しい。この瞳は誰のものでもない俺の愛しい遼子の瞳だ。」

遼子は視線を落として、照れたように微笑んだ。

可愛くて、たまらない。

あれから、シスカも遼子もお互いの血以外には誰の血も口にしてはいなかった。

それでも飢餓感に襲われることは一切なく

お互いを求めることが

酷く多いのが 唯一の悩みの種だ。

「シスカ」

遼子が囁くように言って自分を見上げる。

「ん?」

遼子は頬を柔らかく紅く染めて言う。

「えっちな顔してるよ、修正してください。」

シスカはははっと笑って答えた。

「それは失礼。もう欲しくなっていた、あんまりにも遼子が美しいから―仕方ないことだ。」
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