甘い唇は何を囁くか
シスカは、遼子の頬に、額に、唇まで辿るように口付けを落とした。

人の目など、気にするまでもない。

清香だけが、ブーと舌を出して走り出す。

それを見遣り、微笑みあって、シスカの身体をしっかりと抱きしめた。

「ね、シスカ。」

「うん?」

私は、人間でなくなって今という時間をシスカと生きていくことを選んだ。

宗眞とのことも

シスカを忘れようとしたことも

全部、乗り越えて

暮れかかった日が、オレンジ色の光を射す。

美しいな、と目を細めるシスカを見つめて、遼子は小さく息を零した。

美しい人

彫刻のような綺麗な顔で、私にだけ微笑む
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