ヴァンタン・二十歳の誕生日
 屋根裏部屋から下りると、部屋の様子が変わっていた。

それはまるで十年前のあの部屋その物だった。

私は魔法の鏡を受け取ったあの日、急に屋根裏部屋が怖くなってこの部屋に戻ったのだった。


(あれっ、確かこのような部屋だったな。でも何故屋根裏部屋にもう一つのベッドが置いてあったんだろう? そう。だからハイジごっこも出来たんだよな)

そんなことを考えつつベッドに潜り込んだ。


でもそのベッドは誰かに占領されていた。


枕にあったポニーテールに触れた……


(えっ!? このポニーテールって……、もしかしたら? 私?……)

その時又、あのお・ね・え・さんの事が脳裏を過った。




 (え!? ええっー!?)

頭の中で又何かか弾けた。


(そうか!? そうだったのか。十年前のお・ね・え・さんは私だったんだ。パパの事を思い出しかけた私は、行方不明になった真相が知りたくて……、きっと私はタイムスリップしたんだ!)




 小さい私は何も知らずただ眠り込んでいた。


(ポニーテールか? 何故そのままなんだろうか?)

私は自分のポニーテールを触っていた。


見ると、チビのポニーテールからリボンが外れかかっていた。
私はそれを結び直した。


(あれっこのリボン? 確か……パパの……)




 自分の考えに自信があった訳ではない。

第一タイムスリップ何て嘘っぱちだと思っていた。

まさか自分がこんな目にあうなんて。


母の反対を押し切って屋根裏部屋で寝たことを思い出した。




 収納階段が開いていたことがあった。

あれはきっと母が掃除をしていたのだろう。

好奇心で上った私は屋根裏部屋を発見してしまったのだ。


ハイジやアンに憧れていた私は、其処で寝たいと言い出し住民となった。


そう。
パパが魔法の鏡を見つけてくるまでは……




 屋根裏部屋は私を待っていた。
きっとあの日のままで。


(あの日のまま? そのあの日って何だ?)


パパが行方不明になったあの日?
なのか?


(私は何故此処に居る? そりゃあパパを助けるために決まっている。でも何故その記憶を忘れていたのか? 私って一体何者? 何故今此処に居る?)


又堂々巡り……

答えなど出る筈もない。




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