鈴芽 ~幸せのカタチ~
『三人でご飯なんて初めてじゃないかしら。』

聡子が言った。

イチローは食事が進まなかった。
端から見れば家族団欒の画なのかもしれないが、初めて一緒の時間を過ごす家族だった。

理名は食べながらずっとしゃべっていて落ち着きがなかった。
きっとうれしいのだろう。
そう思うとまたイチローの胸は傷んだ。

『今日は理名の我が儘に付き合わせて悪かったわね。
でも私も楽しかったわ。家族みたいで。
じゃ、またね。』

聡子が帰り際に言った。
『家族か…。』

イチローがつぶやいた。
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