よりみち喫茶
「大丈夫よ。今日のお客さんは、とっても素敵な方だから。声がすごく柔らかいし、丁寧な物腰で、雰囲気が優しい感じなの」
それでもはるくんは、首を痛めてしまうのではないかと心配になるほど、ブンブンと激しく左右に振り続けている。
終いには、パイプ椅子からポンっと飛び降りて、靴も履かずに部屋の隅に駆けて行ってうずくまってしまった。
「もう、恥ずかしがり屋なんだから」
そんなところは、早いうちから直していかなければと思っているが、今は仕方がないので苦笑するにとどめて一人でカーテンをくぐる。
店に戻ると、お客さんである男性は、突然慌てたように顔を上げて店の中を眺め始めた。
そのほんのり赤く染まった頬と慌てたような様子が気になったが、それよりなにより、焦げ茶色のテーブルと同じ色味の椅子は、時が経つ程に深みが増してくるそうで、それが引き立つようにと選んだクリーム色の壁とオレンジがかった電球は、特に気合いを入れただけに、お客さんの目に留まるのはすごく嬉しい。
喜びでいつもの三割増くらい頬を緩めながら、カウンターの中をゆっくりと進んでいく。