よりみち喫茶

初めは“自分の為”に始めたお店が、たった今から“誰かの為”に変わっていく。

柔らかく、優しく、温かく……そうなりたい―――はるくんの為に、自分の為に、そして今日からは、この店を訪れてくれる人達の為に。


「……大した話ではありません。どこにでもある、よくある話です」


そう言って苦笑した男性に、わたしも笑ってみせる。


「話の大小なんて関係ありませんよ。体の疲れは癒すことができますが、心の疲れはそう簡単にはいきません。わたしの力は微々たるものですが、それでお客様が少しでも楽な気持ちでお帰りになれたら、こんなに嬉しいことはありませんから」


だから、聞かせて欲しい……あなたの笑顔の奥に隠された、その辛い気持ちを。


「では……聞いて、いただけますか?私なんかのつまらない愚痴を」

「もちろんです」


力強く頷いてみせたわたしを見て、その人はおかしそうにクスリと笑った。

それからもう一度口を開き


「星見 竜二(ほしみ りゅうじ)と言います」


穏やかな声音でそう告げた。
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