甘い恋飯は残業後に


難波 宗司(なんば そうじ)。店舗営業部部長。

部長なのに、彼のことをわたし達が“難波さん”と呼んでいるのには、ちゃんとした理由がある。


最初の挨拶で彼が

「役職とか階級とか、そういう類のものは大嫌いなので、役職名で呼ぶのはやめてもらいたい」

と言ったからだ。


対外的には仕方ないと思っているようだけれど、社員が「部長」などと呼ぼうものなら、返事をしないだけでなく、全く話も聞いてもらえない。



そんな横暴な彼は、三か月前まで『Caro』の店舗マネージャーとして、店舗間を行き来しながら仕事をしていた。その気分が抜けていないのか、部長職に就いても何かといえば店舗に行こうとする。


本来、店舗巡回は部長の仕事ではない。

そのことをやんわりと諌める社員の言葉には耳を貸さず、彼が部長になったのと同時期に『Caro』の店舗巡回担当になったわたしを引き連れ、少なくとも週に二度は一緒に巡回に出かける。

本部との橋渡し役はそれこそ店舗マネージャーの役目で、わたしは月に三回程度の巡回で充分なのに、だ。


おかげでオフィスでの仕事がいつも滞り気味で、わたしはほとほと困っていた。日々の残業は時間が制限されているから、とにかく徹底的に効率よく仕事をしなければ、どんどんずれこんでいってしまう。


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