甘い恋飯は残業後に


*


「それでは皆さん、夏の暑さに負けることなく頑張っていきましょう、かんぱーい!」

部長からの指名で、幹事が乾杯の音頭を取る。

各々グラスを合わせ、まさに宴会が始まろうとしたその時――事件は起きた。


三十人程入るこの和個室の襖が突然、スターンと大きな音を立てて横にスライドした。

場は、一瞬にして静まり返る。

店員が勢い余ったのかと誰しもがそこへ視線を向けると、よく見知った顔がわたしの視界に飛び込んできて、心臓が止まりそうになった。


「フォレストの店舗営業部の宴会場ってのは、ここかぁ?」

どうやら相当酔っているようで、まともに立ってもいられないらしい。その乱入者は柱に手をついた状態で上半身を半分折り曲げながらそう叫んだ。


「何だお前は。どこの社の者だ?」

すかさず、二課の課長が声を上げる。

その乱入者の後ろから「すみません、すみません」と連れの男性ふたりが顔を出し、彼を柱から引き剥がそうとしている。


「どこの社の者ー? 俺らは天下のモリヤコーポレーションですよ、あんたらの上ですよ、知らないのか!」


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