甘い恋飯は残業後に


二課の課長に「元サービス事業の青柳ですよ。今はマーケティング事業ですけど」と誰かが説明している声が聞こえてきた。

鼓動が、尋常じゃない速度で打ちつける。もう、彼の方は見られない。


騒ぎを聞いて、店の従業員も駆けつけてきたようだ。

「あの青柳様、他のお客様のご迷惑になるようなことは……」

店員の制止も空しく、彼はまたこちらに向かって叫んだ。


「ああ! 見つけたぞ、万椰っ!」

こちらに矛先が向いて、心臓が縮み上がった。みんな、わたしの方を見ている気配がする。

「お前……っ、俺から逃げやがってっ! まだ処女なのかよ、誰ともやってねーのかよ、なあぁっ」

人にはけっして聞かれたくないことが、彼の口から吐き出されていく。


「俺は本当に、お前のことが……好きで……好きで……っ」

「本当にすみません! 桑原もごめん! すぐ連れて行きますから」

連れのひとりが焦った口調で詫びる。彼もまた以前の部署の人間だ。顔はよく見なかったけど、声でわかった。


「俺の人生、あれから狂いっぱなしだ……っ!」

最後に彼は振り絞るようにそう叫んで、ここから立ち去って行った。厳密に言えば、強制的に引きずり出されたのだろうが。


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