甘い恋飯は残業後に
やっぱり難波さんは、わたしから話すのを待っているんだろうか。
ひと口分残っていた焼酎を飲み干し、グラスをテーブルに置く。わたしはテーブルの上のグラスに視線を向けたまま、思い切って口を開いた。
「……あの。さっきの店でのこと、ですけど」
「別に、無理には話さなくていい」
じゃあ何で、と視線を上げると、目の前の彼は肘をついて窓の外を見つめていた。
「俺はただ、桑原をひとりで泣かせたくなかっただけだ」
思わず「ドラマみたい」と言いたくなるようなクサい台詞に、吹き出しそうになる。
「何ですか……それ。もしかして、格好つけてます?」
結局我慢しきれず、言葉にからかいと笑いが混じってしまう。
難波さんはわたしの態度にムッとした様子もなく、黙ったまま窓の外を見ている。稍あってから、彼はわたしを真っ直ぐ見据えた。
「俺が格好つけなら、桑原は意地っ張りだな」
「……反撃、ですか」
仮にも心配して追いかけてきてくれた人にこんな態度を取るなんて、本当に可愛げのない女だと思う。でもこうでもしなければ、自分が保てない気がしていた。