甘い恋飯は残業後に
「これ、飲みやすいですね。芋焼酎は癖が強いっていうイメージがあったんでソーダ割りにしてみたんですけど、これならロックでもいけるかも」
居心地の悪さに、とりあえず焼酎の感想でこの場を取り繕っておく。
「これは芋焼酎の中でも癖がない方だからな」
そう言って、難波さんも焼酎の水割りを喉に流し入れた。
何かを食べる気分ではなかったけど、わたしは間をもたせる為に仕方なくお通しをつついた。こんな時でも、生姜風味の冷えたナスがおいしく感じる。
難波さんはといえば、お通しと一緒に来た沖漬けに箸を伸ばしている。普段なら、わたしもそれに真っ先に箸を伸ばしていたに違いない。でもこんな時に食べて、自分の好物に嫌な記憶を刻みつけるようなことはしたくなかった。
しばらくして、何気なく時計を確認すると、ここに来てから三十分程が経過しようとしていた。
そのかん、ふたりの間で交わされた言葉は「うまいな」とか「次、何飲みますか」とか、当り障りのない短い単語ばかり。