甘い恋飯は残業後に
「桑原は、対等じゃないと嫌みたいだからな」
――対等……?
言葉の意味がよく理解できないうちに「そういえば」と難波さんが続けた。
「今日、水上と飲みに行くみたいだな」
「……聞いてたんですか」
わたしの席から部長席までは少し距離がある。普段なら静かな時以外、部長席での会話はわたしの席からは聞こえない。逆も同じだろうから、恐らく聞こえない筈。きっと水上ちゃんが興奮して大声で話していたせいで、騒がしくても聞こえてしまったのだろう。
「大貫課長も一緒か?」
「ええ……三人で」
何でメンバーまで確認するんだろう。訝しく思いながら難波さんを見ると、彼は眉根を寄せていた。
「くれぐれも、飲み過ぎるなよ」
「わかってます。この間のような飲み方はもうしませんよ」
そう言ったら、あの日のことが一気に頭に蘇ってきて、どうにも居た堪れなくなってしまった。
難波さんが何やら言いかけたところでわたしの携帯が鳴り、話が中断する。
結局、彼が何を言おうとしたのかわからないまま、その日の終業を迎えてしまった。