甘い恋飯は残業後に


「だったら、お互いによかったということだな」

難波さんの言葉に何かしらの引っ掛かりを覚えたものの、それよりも彼に触れられている右手が気になって仕方がない。今はそこに全神経が集中してしまっている。

「違うか?」

同意を求めるようにきゅっと握られて、心臓が跳ね上がる。


「……違わない、です」

悟られたくないのに、口から出た言葉には明らかに動揺の色が滲んでしまっていた。こういう時、自分の恋愛経験値の低さを恨めしく思う。

難波さんは小さく笑みを漏らして、今度はぽん、とわたしの手の甲を軽く叩いた。


手を引っ込めたいような、このまま重ねていてほしいような、複雑な気持ちに自分自身が翻弄されているうち彼の手は離されて、そのままわたしの持っていた封筒を掴んだ。

ひらりと舞ったそれは、ダッシュボードの上に置かれる。


「桑原がそんなに気にするなら、これは引っ込めておく。俺にしてみれば不本意だけど」

そう言って、難波さんは苦笑する。


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