甘い恋飯は残業後に


「ええっ、お金返しちゃったんですか?!」

難波さんにお金を返したことを話すと、水上ちゃんは信じられないという顔をした。

「うん……さすがに出してもらう訳にはいかないでしょ」

「えー勿体ないなぁ。私ならありがたく頂戴して、今夜の軍資金にするのにー」

軽く言われて戸惑う。今どきの二十代前半の女の子達はみんなそう思うのか、それともわたしが考え過ぎなのか。

水上ちゃんはエビの殻を剥いた手をお手拭きで拭っている。


「だって管理職は私達よりお給料貰ってて、しかも難波さんは独身だし、あのぐらいなら何てことない金額ですよ」

「おいおい、今ここに独身の管理職がいるっていうことを完全に忘れてるだろう?」

あっけらかんと話す水上ちゃんに、さすがの大貫課長も苦笑している。

水上ちゃんは一瞬まずい、という顔をしたものの、その後「それじゃ今日のお会計、よろしくお願いしまーす」なんてめげずに言っている。


「まあ、俺もそういう時は素直に受け取ってもらえた方が助かるかな。一度出したものを引っ込めること程、上司としても男としても格好悪いことはないからね」

「そういうものですか……」

頭に『桑原は、対等じゃないと嫌みたいだから』と、あの時の難波さんの言葉が浮かんだ。


――そっか……。

わたしは難波さんに格好悪いことをさせてしまったのか。


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