甘い恋飯は残業後に
「万椰さんは奢られ慣れしてると思ってたんですけど、意外と固いんですねー」
水上ちゃんにもそんなふうに見られていたのか、と苦笑する。
「固いっていうか……わたしは元々、人に奢られるのは好きじゃないから」
『万椰ちゃんばっかりずるーい!』
子供の頃、わたしだけが特別扱いされた時に言われた言葉がふと、頭に蘇る。
何せ子供だから、最初は特別扱いされたことを隠さなければいけないことも知らなかったし、特別扱いした大人もそれを教えてはくれなかった。相手ももちろん子供だから、その辺の追及は遠慮がない。そのうち「ずるい万椰ちゃんとは遊ばない」と理不尽に仲間外れにされてしまった。
過剰に『奢られたくない』、『特別扱いされたくない』と思ってしまうのは、その時のことがトラウマになっているんだろうと思う。
もう子供ではなく社会人なんだから、空気を読まなければかえって失礼なことになると頭では理解しているのに、最終的にはトラウマの方が勝ってしまうことも多くて自分でも困ってしまう。