甘い恋飯は残業後に
「……この間は、ごめん」
コーヒーのスクリューキャップを開けながら、彼はぼそりと呟くように言った。
「そっちの部署にも店にも……万椰にも随分迷惑をかけたみたいで……後から一緒にいた奴らに聞いた」
本当に申し訳なさそうに、開けたコーヒーを飲まずに俯いている。
「あの日も寝不足だったから、思ってたより酒が体にきいたらしくて。営業にいた時はどんなに飲んでもそこまで酔わなかったから、自分でもびっくりした」
「そう、だったんだ……」
無難に返答する。周りの人達からどこまで訊いたのかがわからない以上、迂闊なことは言えない。
わたしは隙を作らないようにと缶コーヒーを口にした。
「……俺さ、今まで生きてきて、挫折らしい挫折っていうものがなかったんだよ。営業では成績も常にトップだったし。今考えるとあの頃が人生で一番、自信に満ち溢れていたんだと思う」
話し出して緊張が薄れたのか、彼はようやくコーヒーを喉に流し入れてから続けた。
「万椰とあんなことがあって……万椰の事情は聞いていたし、理解しているつもりだったけど、どこかで『この俺が拒否されることは絶対にありえない』って妙な自信があったんだ」
「……ごめんなさい」
「いや、それは別にいいんだ」
あまりの気まずさに、わたしは俯くしかなくなってしまった。