甘い恋飯は残業後に
「そんなに会いたかったか?」
――やっぱり。
そう来るだろうとは予想していたけど、あまりにそのまま過ぎて返す言葉が出てこない。
わたしは難波さんに紅潮した顔を見られたくなくて俯いた。
「俺は会いたかった」
「……えっ」
わたしの頭にポン、と難波さんの手が乗る。
「さ、行くか。あまり時間もないし」
手が離されてから顔を上げると、難波さんはもう前を向いていた。
もしかして、照れくさかったんだろうか。でもさっき以上に赤くなっているであろう顔を見られるのが恥ずかしくて、難波さんの顔を確認することは出来なかった。
ガード下、と言われた時点であのイタリアンの店に行くのだろうと思っていたら、難波さんは古民家風の洋食屋にわたしを連れて行った。難波さんが事前に連絡を入れていたらしく、わたし達は二階の個室席に通される。
個室ということによからぬ妄想がよぎり、密かに緊張していたのだけど、それは完全な取り越し苦労に終わった。
彼はキスどころか、手も触れることはなかった。