甘い恋飯は残業後に


期待していなかった、と言えば、恐らく嘘になる。今までならこういう状況になっても、何かを期待するなんて気持ちは全く起きなかった。むしろ先に進んでいくのが怖くて、妙な空気にならないように努めていたかもしれない。

明らかに今までと違う自分の気持ちに戸惑いながら、ゆっくり味わうゆとりもなく食事を終え、最初に待ち合わせしたガード下に戻った時だった。


「多分、週明けには動きがあると思う」

今日は金曜日。
食事中は敢えてなのか、一切仕事の話をしなかった難波さんがやや歯切れ悪くそう言った。

何の前振りもなく唐突だったけど、わたしはあの“聞いてくれるな”の内容のことだろうとすぐにわかった。

もしかしたら、最初からこのことを話したくてわたしを呼んだのかもしれない。仕事がらみかと少し寂しい気持ちもあったけど、話せる範囲で精一杯話そうとしてくれていることが嬉しくもあった。


これから先、何が起きるのか。

街の雑踏に消えていく彼の後ろ姿を見送っていたら、急に小さな不安が胸にぽつりと波紋を描いた。


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