甘い恋飯は残業後に
「凄腕と言われる人の師匠に、淹れ方をみっちり叩き込まれたからな。彼の紹介で、海外までバリスタの修行にも行ってきたし」
「そう、だったんですか」
難波さん自らがそんなことまでしていたとは、知らなかった。
『Caro』は単に机上だけで進められた企画ではなかった、ということか。
ならば、難波さんが『Caro』を大事に思うのは当然、なのに……。
ゆうべ、やっぱり物凄く偉そうなことを言ってしまったかも。
「そろそろ店を開ける準備をするぞ」
ぼんやりとしていたわたしは、難波さんの言葉に慌てて残りのコーヒーを飲み干した。
今日は、開店から客入りがよかった。
飲食目的の人もさることながら、商談や打ち合わせで来ているサラリーマンも目立つ。お店としてはありがたいけど、こういう仕事に不慣れなわたしとしては、あまりありがたくない。
わたしに与えられた仕事は、昨日に引き続きテーブルの片付け。ランチタイムが始まってからは、料理や飲み物も運んでほしいと店長から涙目で懇願された。
そんな顔で頼まれたら、嫌だとは言えない。もちろん、断る選択肢なんか端からないけど……。