甘い恋飯は残業後に
「なんだ?」
普段ならさらりと言えることが、どうしてかなかなか言い出せない。
「汗を、かいたかと……」
「あ?! もしかして俺、汗臭い?」
難波さんは珍しく焦った表情で、自分の体の匂いをくんくんと嗅いでいる。
「いえ、そうじゃなくて……あの……喉、乾いてませんか?」
やっと口に出せたと思ったら、今度は一気に顔が熱くなった。
どうしてこんなに緊張しているのか。自分でもよくわからない。
難波さんは面白いものでも見たかのように、にやりと笑みを浮かべている。
「そうだな、乾いてるかも」
わたしは小走りに冷蔵庫まで行き、中から付箋のついたボトルを取り出す。
――あ。そうだ、コップ! 大馬鹿……肝心な物を持ってこないなんて。
「グラス借りてくるから待ってろ」
わたしの様子で察したらしく、難波さんは足早にキッチンの方へと行ってしまった。
ああもう、何やってるんだろう。これでは余計に疲れさせてしまう。