甘い恋飯は残業後に
――『中身はスッカスカだっていうのにね』
――『万椰は容姿のことを否定したら、何にも残んないんだからさ』
さっきの言葉と、この間の兄貴の言葉が、頭の中で交互に響く。
喉の奥が、ぎゅっと苦しくなった。立ち止まり、慌てて深呼吸する。
こんな些細なことでいちいち泣いてなんかいられない。絶対に、傷つくもんか。
嫌な言葉が頭に響くたび、そう心で唱えて打ち消す。
「――桑原」
呼ばれた声に顔を上げると、そこにいたのは難波さんだった。一緒にいたリテール本部の部長に挨拶をして、こちらに近づいてくる。
「……どうした?」
「……いえ、別に。お疲れ様です」
難波さんが気になる程、わたしは妙な顔をしていたんだろうか。頭を下げて足早にそこから立ち去ろうとすると、何故か難波さんが追いかけてきた。
「ちょっと待て」
後ろから腕を引かれ、強引に足止めされる。
「何ですか、一体。わたしに何か用ですか」