甘い恋飯は残業後に



わたし、桑原 万椰(くわはら まや)が働いているここ、フォレストフードカンパニーは、大手総合商社モリヤコーポレーションの社内ベンチャーカンパニー ――おおざっぱに言えば、大きい会社の中に独立した別の会社を建てたという感じ――で、約一年前に設立されたばかり。


外食事業部に在籍していた人間が新規に事業を起こそうと集まり、元々モリヤで運営していたカフェのノウハウを取り入れて、本格的なイタリアンコーヒーが飲めるカフェレストランを企画しオープンさせた。

そのカフェレストラン『Caro(カーロ)』が無事軌道に乗り、二店舗目をオープンさせたところで、社内カンパニーとして独立することとなった。



フォレストフードカンパニーの主な事業内容は、飲食店の経営。わたしはカンパニーの中枢、店舗営業部の一課に所属している。


ここの社員は、社内公募と上司の推薦で集められた人材というだけあって、周りはみんな、やる気の漲った、仕事の出来る人ばかり。

新しい事業を新しい感覚で、というコンセプトなこともあり、平均年齢は三十代半ば。つい三か月前に着任した店舗営業部部長に至っては、三十歳と大貫課長よりも若い。


……が、その部長がわたしにとっては、この部署で唯一の“困った人”なのだ。


< 9 / 305 >

この作品をシェア

pagetop